PROJECT STORY 03

工場のダウンタイムゼロと無人化を目指す
「SHoPS」

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「SHoPS」

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プロジェクト概要

OT(現場の制御技術)とIT(情報技術)を融合し、工場のダウンタイムゼロと無人化を目指すプラットフォーム「SHoPS(Shibuya Holistic Platform System)」の開発。自社内のOT/IT混成の10名体制で推進し、ゼロからのデータ収集を経て、現在は4社にてPoC(実証実験)を提供中。

Member メンバー

「どう実現すればいいのか」が全く見えない、未知の領域

製品スペックだけでなく稼働後のサービスが問われる時代背景から、新部門「先端情報技術推進部」が設立されました。OT/IT融合した10名体制のチームで、ダウンタイムゼロ・無人化を掲げるプラットフォーム「SHoPS」の開発がスタート。しかし、その要求の抽象度の高さゆえに、現場レベルでは具体的な実現の道筋が見えない状態からの出発でした。

  • Y.S.
    「経営層から下りてきた『制御技術(OT)と情報技術(IT)の融合』というミッションがすべての発端でした。我々がこれまで現場で培ってきた機械のOTにITを掛け合わせることで、お客さまの工場を絶対に止めない、そして究極的には無人化・省人化を目指すプラットフォームを作るという全体像です。しかし、コンセプトが壮大である分、これをどう現実のシステムとして着地させるかという具体的な道筋は、当初は手探りの状態でした。」
  • H.Y.
    「今の製造業においては、単に良い機械を作りましたという売り切り型のビジネスモデルではもはや通用しません。機械のスペックだけでなく、稼働後の保守サービスやシステムの利便性が強く問われる時代になっています。だからこそ、自社内で完結して包括的なシステムサービスを構築・提供できる新たな体制を組むことが、今後の競争力を左右する戦略として不可欠だったのです。」
  • J.T.
    「そうした会社としての大きな狙いは理解できる一方で、現場の人間からすると具体的に何をどうすればいいのかという戸惑いがありました。私はこれまでラベラなどの機械を担当してきたのでOT側の知識はありますが、AIやITに関する専門知識はほとんどありません。この知識のギャップがある中で、どこから手をつけていけばこの壮大なダウンタイムゼロという目標に繋がるのか、現場としても見当もつかない状況でした。」
  • A.K.
    「私は事務職という立場でこのプロジェクトに参加しました。技術に偏りがちな開発現場において、実際に使うユーザーの視点や多様な意見としての気づきがあるのではとアサインされたと理解していましたが、最初は戸惑いましたね。皆さんが『抽象的な目標をどうシステム化するか』と高度な議論を交わす横で、システム開発の知見がない私に何ができるのか。期待と同時に不安を感じていたのは間違いありません。」

AI化を阻む職人技。シブヤの「暗黙知」の深さに改めて触れる

システム構築を進める上で最大の障壁となったのは、AIの学習基盤となるデータが存在しないこと。機械の微細な機微を感じ取る職人の「暗黙知」は言語化されておらず、外部のIT企業へ開発を委託する手法では本質的な解決になりません。そのため自社のエンジニアが自ら現場へ赴き、データを収集するプロセスが始まりました。

  • H.Y.
    「このようなシステム開発を、外部のソフトウェア会社にそのまま委託して進めるのは手段としては簡単です。しかし、それをやってしまうと、この機械のこの部品は物理的にどう動くのかという動作原理の基礎から教える必要があり、膨大な時間とコストがかかるばかりに…。現場の運用に耐えうる本物のシステムにはなりません。我々の機械を一番理解している自分たちの手で、一歩ずつ構築していくしかない、という結論に至りました。」
  • T.K.
    「だからこそ、自分たちの足で現場の詳しい熟練者に直接インタビューして理解を深めるアプローチをとったのですが、これが想像以上に困難でした。職人さんたちは『なんとなく音の違いでわかる』とか『少しだけ締める』といった、無意識の感覚で高度な判断を行っています。この、これまでマニュアル化されてこなかった言葉にできない深い技術力を1つずつ引き出し、文章化していく作業は本当に途方もないプロセスでした。」
  • J.T.
    「現場から引き出してくれた文章を、今度はAIが実際のトラブル対応フローとして活用できるように実装するのが私の実務でした。例えば私が担当してきたラベラの機械でエラーが起きた際、原因と解決策のパターンは無数に存在します。言語化された熟練者の知見を、AIが迷わず的確な対処法として提示できるように1つひとつ論理的に紐付けていく。制御技術(OT)と情報技術(IT)を頭の中で繋ぎ合わせながら、膨大なエラーの分岐を整理する作業をコツコツと積み上げていきます。」
  • A.K.
    「初めはスマートで洗練されたITシステムの開発現場を想像していたのですが、実際のプロセスは全く違いました。エンジニアの皆さんがデスクワークにとどまらず、毎日自分の足で現場へ向かい、職人さんと膝を突き合わせてアナログな情報収集を繰り返している。最新のAIプラットフォームが、実はそうした人間同士の深い対話と、地道な事実の積み重ねによって作られているという事実は、そばから見ていて非常に驚かされる光景でした。」

制御技術(OT)と情報技術(IT)との融合が生み出す可能性

現場での徹底したヒアリングとデータ化の試行錯誤が実を結び、職人の深い知見がAIの言語へと変換され始めました。自社内にOTとITの知見が同居しているからこその強みが機能し、抽象的だった「無人化」のピースが具体的なシステムとして繋がり始めた瞬間でした。

  • T.K.
    「現場の職人さんからヒアリングして集めた定性的なノウハウは、そのままではシステムに組み込めません。それをどう整理すべきかずっと思考錯誤していましたが、ある時、そのアナログな知見を『AIが読み込みやすいデータ形式』へと上手く変換し、紐付けることができた瞬間がありました。現場の言葉をシステム言語へ翻訳できたという確かな手応えをついに感じ、とても嬉しかったことを覚えています。」
  • J.T.
    「あのデータ形式の落とし込みができた時期から、一気に視界が開けました。私自身、日々の業務の中でAIなどのIT知識を必死にアップデートしながら進めていたのですが、バラバラだった膨大なエラーパターンがシステムとして繋がり始めたんです。自分が培ってきた現場のOT知識と、新しく学んだITの知識が頭の中で明確に融合し、課題解決の糸口が見えた瞬間でした。あのブレイクスルーをした瞬間のワクワクは、今でも鮮明に覚えています。」
  • H.Y.
    「そこから一気に加速したのは、自社内に機械の深い知見を持つOTの技術者と、システム開発を担うITの技術者が同居しているからです。外部を挟まず、同じ社内で直接意見をぶつけ合い、すぐに実装して現場で試すことができる環境があります。この部門の壁を越えた連携の優位性こそが、他社には容易に真似できない我々の最大の武器なのだと、システムが具体的に形になり始めたあの時期に改めて再確認することができましたね。」
  • Y.S.
    「プロジェクト開始当初は『ダウンタイムゼロや無人化なんて、どうやって実現するのか』という状態でしたが、足を使って地道に集め続けたデータがシステム基盤として機能し始めたことで、不可能に思えたパズルのピースが一つずつ確実に埋まっていきました。抽象的だったビジョンが現実のシステムへと変わっていくプロセスを体感し、このプラットフォームを必ず完成できるという強い確信に変わっていった時期でした。これこそが、シブヤの底力なんですよ。」

ダウンタイムゼロと無人化が切り拓く新しい未来

地道な暗黙知のデータ化を経て構築されたシステムは、現在4社でのPOCへと進んでいます。目指すのは、ハードウェアに依存せずソフトウェアの更新で機能が上がり続ける世界と、人が単純作業から解放された先の未来の実現です。

  • Y.S.
    「我々が最終的に目指しているのは、ハードウェアに依存しない『SDA(ソフトウェア・デファインド・オートメーション)』の世界です。スマートフォンと同じように、導入した機械自体は変わらなくても、ソフトウェアをバージョンアップするだけで機械が学習し、進化し続ける。今回のSHoPSプロジェクトはその第一歩であり、この仕組みを洗練させることで、製造業界のこれまでの常識を根本から覆していくつもりです。」
  • T.K.
    「現在はまずボトリングプラントの領域に絞って、職人技をデータ化しAIに学習させるという仕組みを確立することができました。今後は現在進行中のPoC(実証実験)で得られるリアルな評価を反映させながら精度を高め、将来的にはこの確立した手法を製薬分野など、より厳密な制御が求められる他の製造業全般へもどんどん横展開していきたいと考えています。我々の技術の適用範囲はまだまだ広がっていくはずです。」
  • A.K.
    「このシステムが完成して現場に導入されれば、監視業務や単純なトラブル対応の負担が激減します。それによって労働環境がさらに改善され、ワークライフバランスが向上するだけでなく、人が人にしかできないもっと創造的な仕事に時間を使えるようになります。技術的な進化の先にある、現場の人々に心と時間の『余裕』が生まれる未来に、プロジェクトの参加メンバーとして非常に大きな期待を寄せています。」
  • J.T.
    「これまでは機械の挙動を人間が監視し、人間が対処するのが当たり前でした。しかし、AIがここまで現場の高度な知見を学習してカバーできるようになった以上、我々現場の技術者も『AIに任せる部分』と『人間が判断する部分』を見極め、AIを使いこなす側へと進化しなければなりません。システムが成長し続けるのなら、我々自身も常に新しい技術をアップデートし続けなければならないという、強い覚悟をもって、今後の成長を続けていきたいです。」