“究極の医療”に貢献する

[ 事業背景 ]

私たちが再生医療のプロジェクトを最初に立ち上げた当初。
そのころは「再生医療」という言葉自体、世間ではほとんど馴染みがなかった。

「当社がこれまで培ってきたボトリング技術や無菌化技術は、再生医療という多くの人の命を救う分野で
も活かせるのではないか」当時の社長自らが再生医療システム本部の本部長に名乗りを上げたのが2013
年。当社として、この分野への本格的な取り組みがスタートした。


[ 未知の領域に“部門の壁”はあってはならない ]

「私が澁谷工業に入社したころは“再生医療”という概念すら明確でなかったと思います」
そう語るのは、技術部・部長代理補佐として本部のマネジメントを担っている出口。

「入社後はボトリングシステムや包装機器の設計・開発を担ってきたのですが、包装機器の開発工程は
特に複雑。そこでの経験を買われ、再生医療システム本部に加わりました」

出口が本部の一員となった当時、在籍する社員は20名ほどだったという。
現在の再生医療システム本部は、技術部、営業部、細胞の製造開発をおこなっているセルバイオ部、
そして実際に細胞製造をおこなう加工センターの4部門に分かれており、計45名が在籍している。

再生医療の分野には、国内外を問わず多くの企業が参入している。
その中で澁谷工業の強みの本質は“再生医療以外”にあるのかもしれない。

「多岐に渡る事業を展開している当社だからこそ、困難な課題を目の前にしても、それぞれの分野から
知見を寄せ集めれば解決できるはずだというマインドをみんなが持っています。だからこそ部門を超
えた連携が盛んにありますね」

再生医療システム本部でも月に一度、情報共有の機会を設けて、若手のアイデアも積極的に取り入れ
ているという。


[ ドクターとも対等に話ができる、20代の社員もいる ]

「私は機械設計の担当者として再生医療システム本部に加わったのですが、自ら細胞製造をおこなうこ
ともあります」

そう話すのは設計課の北森。大学・研究機関と共同で自動培養機の開発に取り組んでいる。
細胞は非常に繊細で複雑。個別の差異があり、人手による製造時には品質のばらつきが発生しやすい。
その課題を解決するのが自動培養機であるものの、生き物だからこそ製造工程の標準化は困難を極める。

均一的な細胞製造を担保し、量産化に対応する培養機をつくりだす。一つひとつの機能を検証しながら
結果を機械に落とし込み、動作を改善させている最中だ。

「『北森さんも自分の手で培養できるようになったら、検証に何か役立てられるかもしれないね』。そん
なドクターからの一言がきっかけでした。『機械工学専攻の自分には、いくらなんでも専門外過ぎる…』
と思いましたが(苦笑)。でもやってみて初めて分かることもあると思い挑戦しています」

細胞製造の量産化については機械の専門知識が特に求められるため、ドクターも専門外であることが多
い。ドクターとは同じゴールを共有する“ワンチーム”として再生医療の発展に向けた意見を出し合っていく。

「多くの人の命を救いたい気持ちに立場は関係ありません。量産化に向けた取り組みにドクターも興味
を持ってくださっています。とても良い関係で互いを高めていくことができていると感じています」

[ 横断的な知識が、研究を前進させるカギとなる ]

自社の自動培養機を用いて細胞加工事業に乗り出した当社。
細胞加工センターに所属する上野は、今日も個性ある細胞と向き合っている。

「安定した作業を可能とするのが培養機の強みですが、細胞は生き物であり個々に状態が異なる為、
それに合わせた調整作業が必要です。まだまだ課題は多いですね」

入社時点で再生医療の知識はなかったが、人の身体には興味があった。
澁谷工業が再生医療に取り組んでいることを知り「やってみたい」と感じたという。

「現在は大学のドクターからの依頼をもとに治験用の細胞製造をおこなっています。一方的に指示を受
けてつくり続けるということではなく、より早くより正確な作業とするために、現場の意見をこちらか
らドクターらに伝えて手順を改善していくこともあります」

自然科学を専攻していた上野。機械の知識もイチから身につけていった。

「培養機を自らメンテナンスすることもあります。そうした経験から、安定した細胞を製造するためには、機械の状態を含めた外部環境の維持も必要であると学びました。
細胞単体だけを見ていては不十分で、機械の特性を十分に理解することで最適な製造方法が見えてくる
のです。これからもさまざまなチャレンジをして、横断的な知識・スキルを身につけていきたいですね」

『ボトリングといえば澁谷工業』。
そんな代名詞に『再生医療といえば澁谷工業』も加わる日は、そう遠くないのかもしれない。